昨日までの春のような陽気が一変し、冬本来の冷え込みとなった午前中。インタビューの現場に現れたむらたえりさんは、自身のイラストから飛び出してきたような、鮮やかな赤の服を纏っていました。耳元でキラリと光るのは、彼女の代名詞とも言える「ハート」のピアスです。
最初は初めて会う人たちに少し緊張気味だったむらたえりさんですが、制作の話になると、その瞳は静かに熱を帯び、自分の世界を信じる強さを宿していきました。
「可愛い」の裏にある、凛とした企み。
絵と言葉で、人の内側のエネルギーを再起動させる作家でありアートディレクターである、むらたえりさんにお話を伺いました。
揺るぎない「土台」の上に、ワクワクを乗せる
Q.「絵と言葉の作家」と「アートディレクター」、それぞれどのような活動をされているのですか?
むらたえりさん: アートディレクターとしては、広告制作の現場で培ってきた経験を活かして、情報を整理し「どう視覚的に見せれば一番伝わるか」というデザインの設計図を描く役割を担っています。
一方で作家としては、そのしっかりとした土台の上に、私自身の「楽しい」「ワクワク」という体温を、イラストと言葉で形にしています。どちらの活動も「本質を大事にしながら遊び心を入れる」という点は共通していますが、今は特に作家としての表現を通じて、手に取ってくれた人の日常が少し愉快になるような作品づくりに力を入れています。

制作の話になると、プロとしての安定感を感じさせるキリリとした表情に変わります。ただ「描く」だけでなく、客観的な「設計」という土台が彼女の中にあるからこそ、その表現は自由で、迷いがないのだと感じさせてくれます。
「可愛い」は、心を動かすための最後の鍵
Q.今、あえて「可愛い」や「愛嬌」を活動の軸に据えている理由はなんですか?
むらたえりさん: 広告の世界で働く中で感じたのは、どんなに立派な企画でも、最後に人の心を動かし、「いいな」と思ってもらえるのは、遊び心や「可愛い」といった愛嬌の部分なんだな、ということでした。
客観的に情報を整理する視点があるからこそ、自分の「ワクワク」を乗せたときに、遊び心が迷子にならない。ちゃんと届く形にできるのかな、と思っています。
迷いの中で見つけた「ハート」と、読み手に寄り添う一冊
Q. 以前開催された「ZINEフェス」で出品された、あの「ハート」のモチーフにはどのような想いがあるのですか?
むらたえりさん: 作家活動を始めた当初は「自分のイラストで何を描けばいいんだろう」と、すごく迷っていた時期がありました。でも、筆を動かした時に一番スラスラと描けたのがハートだったんです。「ハートを描くことは、愛を込めること」。その気づきが、今のスタイルを形作ってくれました。

ハートの話になると、表情がパッと楽しそうに熱を帯びるのが印象的です。
Q. 冊子(ZINE)の中には、読者が書き込めるスペースもありますね。
むらたえりさん: 手に取った人が自分らしい愛の込め方を詰め込むことで完成する、参加型の一冊を作りました。書き込むことで、ふとした瞬間に自分の中の小さな光に気づけるような…。そんな押し付けがましくない「自分だけの広告」になってくれたら嬉しいです。

制作の裏側:凛とした強さを秘めた「可愛い」の設計
Q. 一枚の絵の中に、どんな「遊び心」や「言葉」を潜ませるか。そのこだわりを教えてください。
むらたえりさん: 目指しているのは、ただ可愛いだけの可愛さではなく、どこか凛とした強さやユーモアを感じる表現です。
言葉についても、単純に誰かを慰めたり、押し付けがましく「頑張れ」と背中を押したりするのではなく、その人の内側にあるエネルギーを「再起動」させるようなフックにしたいと考えています。同情でも重い想いでもない。でも、ふと心に残るものを、戦略的に「可愛い」という形で差し出したいんです。
そうすることで、芯のある「強い可愛さ」が生まれるのかなと思っています。

その「可愛い」の裏側には、緻密な計算と静かな「企み」が隠れています。「強い可愛さ」を語るときの凛とした眼差しからは、「可愛い」という言葉を軽く扱わず、大切に育ててきた作家としての誠実な覚悟が伝わってきます。
クリエイティブな日常から生まれる、新しいワクワク
Q. 現在ボードゲームを制作されているそうですが、どのようなものなのでしょうか。
むらたえりさん: ゲーム設計者はゼロイチの発想やAIが得意で、ゲームバランスをロジックで組み上げるタイプです。一方で私は、彼が作る仕組みにデザインで「体温」を吹き込む役割を担っています。
小ロットゆえの原価の高さなど、販売面での課題は正直たくさんあります。そうした試行錯誤も含めて、創作に向き合う時間そのものが、新しいアイディアの源になっています。日常の何気ない会話が、いつの間にか遊びに変わっていく。その感覚が、今の私の作家活動にも、静かにワクワクを運んでくれています。
横浜という街で見つけた、つながるご縁
Q.去年の秋に横浜へ来られたばかりとのことですが、地域のコミュニティ(ヨコハマヨコツナガリ)に参加しようと思ったきっかけは何ですか?
むらたえりさん: 横浜には何の繋がりもなかったので、地域のコミュニティに参加したいなと思っていたんです。そんな時にこのプロジェクトを見つけて…。「これ、私のための企画かな?」って思うくらい、タイミングが完璧でした(笑)。この街の新しい繋がりの中で、一歩を踏み出せたことが、今はとても嬉しいです。
世界観そのものが、誰かの力になれるように
Q. これからの展望を教えてください。
むらたえりさん: 今はデザイン業と作家活動を、いわば一人二役のような形で続けていますが、数年後にはその二つをもっと自然に融合させていきたいと思っています。

デザインをご依頼いただけることはもちろんありがたいですし、これからも真摯に向き合っていきたいです。ただ、それだけでなく、「むらたえりのこの世界観をプロジェクトに取り入れたい」と言っていただけるような仕事の形が増えていったら、とても嬉しいですね。
作家としての表現とデザインの設計力を、より高い次元で溶け合わせていくこと。それが今、思い描いている未来です。そしていつか、大人も子どもも一緒に楽しめるような絵本をつくること。それが、今いちばん叶えたい夢です。
可愛いだけではない、ちゃんと悩んで、ちゃんと選び取ってきた強さがあります。だからこそ、彼女の描くハートは決して軽くありません。
実は私、彼女の作品のファンです。SNSではキャッチーなイラストが目を引きますが、本質は「言葉とイラスト」が重なった瞬間に立ち上がる、あの独特の温度にあると感じています。
「可愛いを、軽く扱いたくない」。
その言葉の通り、彼女はイラストと言葉を通して、見る人が自分の中の小さな光に気づくきっかけを丁寧に届けています。その誠実さこそが、作品に触れる私たちの心にも、そっと灯をともしてくれるのだと思います。
横浜から生まれる彼女の“強い可愛い”が、これからどんな景色を描いていくのか、今から楽しみでなりません。
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この記事をつくった人たち
この記事は「ヨコツナガリの会」所属メンバーで作成しました。
ヨコハマ、ヨコツナガリが運営する「ヨコツナガリの会」は、神奈川県で活動するクリエイターのリアルコミュニティです。
“クリエイターの力で、横浜をどんどこ盛り上げる!”をコンセプトに、横浜拠点クリエイターが繋がり様々なプロジェクトに挑戦をしています。







