ふわふわと優しい世界観の写真。やわらかな光に包まれた双子、笑い合う家族。
しかし、ひとたびお話を伺うと、その印象は心地よく裏切られます。写真のことを語る彼女の視線は、いつだってまっすぐに“ママ”へと向けられていました。
今回お話を伺ったのは、自身も双子を含む4児の母であり、多胎児専門のフォトグラファーとして活動するmaiさん。彼女のレンズは、子どもだけを追いません。眠れなかった夜も、泣きたくなった朝も、それでも立ち続けている“ママ”の姿を、愛を込めて写し出しています。
「記憶がない」ほどの育児。その先で見つけたカメラ
Q.写真活動を始めたきっかけを教えてください。
maiさん: 双子が生まれたことがきっかけです。当時は家の中にずっと閉じこもっていて、双子と自分だけの生活が本当に辛くて……。外に出たくても、もともとママ友付き合いが苦手だったんです。意を決して公園に行くと、決まって『双子ですか?』と声をかけられる。悪意がないのは分かっていても、毎回説明すること自体が、当時の私にはひどく重荷でした。

何か自分が心から楽しめるものを見つけないと壊れてしまう、そう思って手にしたのがカメラでした。せっかく撮るなら可愛く残したいと夢中で勉強するうちに、久しぶりに『自分自身』にベクトルを向けられた気がして。それが嬉しくて、気がつけば撮り続けていました。
Q.ご自身の当時の育児、覚えていますか?
maiさん: 実は、ほとんど記憶がないんです。双子育児は常にフラフラ状態で、日々の慌ただしさの向こう側に、たくさんの愛おしい日常がこぼれ落ちてしまいました。だからこそ、当時の私と同じように必死で生きているママたちに、失われた記憶を写真で取り戻してほしいと思っています。
双子・三つ子育児の『特別』な毎日の奥にある、当たり前で、ささやかで、でも宝物のような家族の時間。それらをきちんと形にして、いつでも『いとおしい日々をまきもどせる』ようにしてあげたいんです。
同じ多胎ママだからこそ、孤独やしんどさも全部わかる。だからとことん寄り添う撮影体験を通して、孤立しがちなママたちに『あなたは一人じゃないよ』と伝えたい。『写真』というコンテンツをきっかけに、多胎ファミリーの繋がりや笑顔が広がり、社会全体に『ふたごでよかった』『みつごでよかった』と思える瞬間を、もっともっと増やしていきたいです。
ママを、もう一人の主役に
Q.双子・三つ子撮影ならではの、こだわりや醍醐味はありますか?
maiさん: よく『どんなポーズがいいですか?』と聞かれますが、きっちりポーズを決める撮影はあまりしないんです。一緒に遊びながら、その子たちを追いかけて撮る。撮影中、私はずっと走り回っています(笑)。お行儀よく整った写真だけでなく、その年齢ならではの“わちゃわちゃした愛おしさ”こそを残したいですね。
それともう一つ、誰にも気づかれないかもしれないけれど、絶対に譲れないこだわりがあります。それは『ママを美しく撮ること』です。

Q.ママを、ですか?
maiさん: はい。『今日はメイクをしていないから…』と気にされるママも多いのですが、子どもを見つめる表情は、誰よりも、何よりも美しい。その一瞬を絶対に逃したくないんです。
子どもの支度だけで精一杯で、自分のことはいつも後回し。なかには『今日のために、久しぶりにメイクをしてきました』というママもいらっしゃいます。だからこそ、撮影の時間そのものが、がんばるママへの『ご褒美』になってほしいんです。
子どもを抱きしめる手、慈しむように目を細める横顔、疲れているはずなのに、我が子の前でちゃんと笑おうとする表情。その全部が美しい。それを写真を通して、きちんと本人に見せてあげたいんです。
「自分を誇れる仕事」で、一人の人として輝く
Q. そこから本格的に開業された理由は何だったのでしょう?
maiさん: 双子のトイレトレーニングが成功したとき、ふと思ったんです。『子どもたちはこんなに成長しているのに、自分はこのままでいいのだろうか』って。当時は多胎育児の支援イベントを企画・主催したりもしていましたが、どこか中途半端に思えてしまって…。『私も自分の足で立ち、何かを成し遂げたい』と一念発起し、仕事として形にすることに決めました。

じつはmaiさん、もともとは記者として8年間キャリアを積んできた過去を持ちます。仕事に全力で向き合ってきた人だからこそ、「授乳とおむつ替えに明け暮れる毎日」の中で、自分自身を見失いかける焦燥感は人一倍大きかったと言います。
だからこそ今、フォトグラファーとして、“ママである前に、一人の人として誇れる時間”を世のママたちに届けたい。その強いまなざしは、彼女の生み出す作品すべてに宿っています。
個展は「あなたは一人じゃない」と伝える場所
Q.10月にも個展を開催されるそうですね。
maiさん: はい。でも、自分の写真だけを見せたいわけではないんです。一番の目的は、多胎育児をがんばるご家族が繋がれる場所にすること。会場に来たママたちに『こんなにたくさんの仲間がいるんだ』と感じてもらい、少しでも孤独を減らしたいと思っています。

双子・三つ子育児は、世間から「大変だね」と言われることが圧倒的に多い。けれど、maiさんは優しく、力強くこう言いきります。
「大変なのは当たり前。でもそれ以上に、本当に可愛いんです」
“大変だね”という労いよりも、“可愛いね”と、一緒に笑顔で言ってもらえる社会にしたい。その言葉は、優しく、けれどずっしりとした説得力を持って響きました。
どんな子も、断らない
Q.最後に、今後挑戦していきたいことを教えてください。
maiさん: いま、医療的ケアが必要なお子さんや、発達特性のあるお子さんの撮影にも対応できるよう、専門的な勉強を進めています。どんな状況にあるお子さんであっても、断らずに撮影できるようになりたいです。

撮影の幅を広げたいというビジネス的な理由ではなく、「私は、『無理です』と言わない人でいたい」ーー彼女の言葉からは、そんな強い覚悟が伝わってきました。
どこかで撮影を断られ、悲しい思いをしてきたかもしれないご家族が、安心して羽を伸ばせる場所であるために。ママたちの絶対的な味方であり続けるために、彼女は今日も学び、カメラを構え続けています。
maiさんの言葉には、一片の迷いもありませんでした。 「記憶がない」と語るほど壮絶な日々を潜り抜けてきたからこそ、いま、誰かの暗闇を照らす光になれるのでしょう。
彼女が切り取る写真は、単なる「きれいな思い出」ではありません。 今日まで必死に、愛を持って我が子を育ててきた、ママたちの「生きた証」そのものなのです。
「どんな子でも断らないフォトグラファーでありたい」と微笑む彼女の姿が、今も深く印象に残っています。
▼ maiさんの詳細・お仕事依頼はこちら [ 横浜クリエイターズマップで「ふたごフォト/mai 」さんを見る ]

この記事をつくった人たち
この記事は「ヨコツナガリの会」所属メンバーで作成しました。
ヨコハマ、ヨコツナガリが運営する「ヨコツナガリの会」は、神奈川県で活動するクリエイターのリアルコミュニティです。
“クリエイターの力で、横浜をどんどこ盛り上げる!”をコンセプトに、横浜拠点クリエイターが繋がり様々なプロジェクトに挑戦をしています。







